メッセージ 1

生徒たちへのメッセージ 1
 親心「赤い熊のぬいぐるみ」
   
  「生んでくれてありがとう」。

 その一言を言えぬまま永遠の別れとなった。
残してくれた温かな思い出はたくさんある。
貧乏だったし、旅行に行ったこともない。
それでも、安心して暮らせてたのは、母親
の愛情があったからだと思う。

 小学校2年の頃、テレビで見たぬいぐるみ
を欲しがった。しかし、お金が無いので、
買ってもらえなかった。

 数日後、学校から帰るとテーブルの上に
赤い熊のぬいぐるみが、「ちょこん」と
置いてあった。私は大喜びして、毎日、その
熊と一緒に寝ていた。母と姉が安い材料で
作ってくれたようだ。

 私も大きくなり、熊のことは忘れていた。

 時の流れには逆らえず、母が他界した。
母の持物を整理していると、茶箪笥の中に、
あの赤い熊のぬいぐるみが「ちょこん」と  
座っていた。「あっ、いた!」と思った。

 懐かしさが、ほっこりと蘇ってきた。
「ありがとう」の気持ちも溢れてきた。

  娘が小学校5年生になったある日、娘に赤い熊のぬいぐるみを見せた。
 今の子供は、なんて反応するのだろう。

 「あっ、熊さん、かわいい!」。

 娘と会えずに他界した祖母の話をして、
 ぬいぐるみが生まれた経緯を伝え、
 「欲しい?」と聞くと「うん」と笑顔。
 母の想いは、四十年の時を超え、私の娘に伝わった。

 今、赤い熊のぬいぐるみは、高校生になった娘の本棚に「ちょこん」といる。

「生んでくれてありがとう」の一言が言えなかった後悔。

せめて、母が注いでくれた愛情の証は、子供たちには伝えたい。

それがまた、時を超えるように。

感謝しているその気持ちは、相手に
言葉にして伝えたい。今のうちに。
時の流れに、人は逆らえないのだから。

(平成28年度PTA広報誌「寒椿」から転載)

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